Dr.パルナサスの鏡

 皆さんは『Dr.パルナサスの鏡』(The Imaginarium of Doctor Parnassus)という映画を見たことがありますでしょうか? これは2009年に公開されたファンタジー映画で、当時は主役のトニーを演じていたヒース・レジャーが急逝したこともあって撮影続行不可能になってしまったのですが、彼の意思を継ぐものによってとうとう完成までこぎつけた作品になっております。このサイトではそんな『Dr.パルナサスの鏡』についての見どころや、俳優についての情報を詳しく消化敷いていきます。

監督はテリー・ギリアム

 本作はテリー・ギリアム監督によって撮影された作品で、PG12指定になっておりますが、第62回カンヌ国際映画祭上映作品に選ばれる快挙を果たしております。平成19年12月にロンドンで撮影開始してからというもの、全ては順調に運んでいくように思えましたが、撮影中にトニー役を演じているヒース・レジャーが急逝しまったため、撮影が急遽中断し、一時は制作が危ぶまえてしまうという危機的状況に陥っておりました。

復活するDr.パルナサスの鏡

 しかし、そんな中で、彼と親交のあったジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウという三人の名俳優が別世界へとトリップしたトニーを演じるという事がとうとう決定し、撮影が再開されることになるのでした。

 ヒース・レジャーの出演しているシーンはそのまま使われているものの、整合性を合わせるためにシナリオに関しては大きな変更を迫られたとのことです。そして、そのジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウの三人ですが、実際に本作の出演料として多額のキャッシュを受け取っているわけですが、それらを全てヒースの遺児でとなってしまった娘のマチルダちゃんに全額寄付しています。当時はまだ二歳であったマチルダちゃんですが、そう言った後押しもあってかすくすくと成長していっているそうです。

トム・クルーズはダメだった

 ちなみに亡くなったヒース・レジャーの代役をテリー・ギリアム監督が探していることを真っ先に知ったトム・クルーズが、この作品への出演を申し込んでいるのですが、監督は「ヒースをよく理解している本当の友だちに出演して欲しい」といって断っています。確かにインタビュー・ウィズ・ヴァンパイアや、レインマン、そしてトップガンやマグノリア、はたまたミッション・イン・ポッシブルシリーズなどで名演を見せているトム・クルーズではあるのですが、作品の状況が状況だけに、ただ単にいい俳優を使って撮影するというわけにはいかない作品になっていたことは確かです。

 トムにとっては手痛い反応だったのかもしれませんが、結果として、マチルダちゃんがギャラを全額受け取るという結末になったのは、ジョニー・デップ、コリン・ファレル、ジュード・ロウの三人だったからこそだと言えるのではないでしょうか?

勿論作品としても面白い

 勿論、そう言った通常あり得ないような状況から撮影されたものであるという事を抜きにしてもこの作品は非常に面白い作品になっています。特に、「人間の欲」をメインテーマに据えて描かれたストーリーもそうですが、その独特な映像美からくる世界観などもこの作品の一つの魅力となっているのです。

あらすじ

 旅芸人の一座の座長であるパルナサス博士は、2007年のロンドンに今にも壊れそうな馬車で現れます。この座長は1000歳以上とも言われている人物で、不老不死の能力を持っています。その博士が行う「イマジナリウム」という名の鏡の出し物は、人の心の中の欲望を具現化して見せるというものでした。

 パルナサス博士に導かれ、その「イマジナリウム」という鏡を通り抜けた観客達は、自分の願望が反映された幻想世界をさまよい歩き続けることになるのです。しかし、そんな怪しげで、危なげな出し物に興味を持つ客は全くおらず、更に博士は毎日、博士はなにかに怯えていたのでした。

 何故怯えていたのかというと、パルナサス博士は、元々偉大な僧侶だったのですが、数世紀前に、悪魔のMr.ニック(トム・ウェイツ)にそそのかされて、ある一つの賭けを行ってしまったのでした。それは一人の女の人に恋をしたことからすべてのことが始まったのですが、ともかく、不死と若さを手に入れる引き換えに、生まれた娘が16歳の誕生日を迎えると同時に、彼に自分の娘を引き渡す約束をさせられてしまっていたのです。

 そうとは知らない博士の娘ヴァレンティナ(リリー・コール)は、ある時橋の欄干で首を吊っている青年トニー(ヒース・レジャー)を助けることになります。

 記憶喪失のトニーは、一座に加わると、巧みな話術で女の人客を惹きつけ、ヴァレンティナも彼に心奪われます。そして期限の3日前になって、賭けに勝てば娘を渡さなくてもいいと博士に告げます。その賭けとは、鏡の世界に入り込んだ客に、悪魔の欲望の道と節度ある博士の道を選択させて、先に5人を獲得した方が勝ちというものでした。

 事情を知ったトニーは、次々と女の人客を鏡の中へ誘導し、そして、記憶を取り戻し、自分を殺そうとしたロシアン・マフィアの姿に気付いたトニーも鏡の中へ逃げ込んでいきます。鏡の中での世界で客の願望を形にしたトニー(ジョニー・デップ)は、次々と客を博士の選択へ導いていきます。

 しかし残り一人で賭けに勝利できるという状況で、トニー自身の願望を反映したトニー(ジュード・ロウ)が誘導に失敗し、追っ手と悪魔に迫られ、トニーとヴァレンティナは一緒に鏡の中へと逃げ込みます。すると、ヴァレンティナの願望を反映したトニー(コリン・ファレル)が彼の真の姿を現すのです。

キャスト

  • トニー(アンソニー・シェパード):ヒース・レジャー
  • 鏡の向こうのトニー#1 :ジョニー・デップ
  • 鏡の向こうのトニー#2 :ジュード・ロウ
  • 鏡の向こうのトニー#3 :コリン・ファレル
  • パルナサス博士 :クリストファー・プラマー
  • Mr.ニック :トム・ウェイツ
  • ヴァレンティナ(パルナサスの娘) :リリー・コール
  • アントン :アンドリュー・ガーフィールド
  • パーシー: ヴァーン・J・トロイヤー

スタッフ

監督
テリー・ギリアム
脚本
テリー・ギリアム
チャールズ・マッケオン
製作
ウィリアム・ヴィンス
エイミー・ギリアム
サミュエル・ハディダ
テリー・ギリアム
製作総指揮:
ディヴ・ヴァロウ
ヴィクター・ハディダ

感想

 悪魔と契約し、不死の肉体となっているトニー博士ですが、死を与えてもらう代償にはあるものを差し出すか、悪魔に先駆けて五人を獲得しなくてはダメという厳しい条件を突きつけられてしまいます。折角永遠の命があるのにも関わらず、非常に苦労してでも死が欲しくなる。与えてほしいと思うようになるという主人公の考えにある程度の同意は覚える上、それを決める為の判断が見世物に来ている客だというところが、この物語の妙とも言える部分でしょう。

 また、鏡の中トニーはそれぞれの世界で望む容姿になれるという設定があるのですが、これは代役であるがゆえに付け加えられた設定でありながらも一つの魅力として機能しておりました。特にトニーの正体や、博士と悪魔の駆け引きがストーリーの主軸になっていくこのストーリーですが、まるで悪夢の中身をそのままフィルムに焼き付けたようなシーンがあれやこれやと出てきます。

 ヒースの代役を演じる三人の名優が、その世界の中を縦横無尽に駆け巡るわけですが、髪型やメイクを揃えているため、本当にトニーという役柄の一面性を表すメタファーとして十分通用するようなものになっておりました。コリンに関しては若干違うような印象も受けましたが、それも物語の中でしっかりと昇華されていたので、本当に素晴らしい作品だと思いました。

 是非、この4人の名優による共演を一度は見てみてください。